「ジブリの仕事のやりかた。」を読んで(3) 〜 「才能を引き出す才能」とは何か
引き続きです.
「才能を引き出す才能」について追っていきます.
まずは,ディズニーを引き合いに高畑勲監督が語っていきます.
ディズニーは、すでに無声映画時代から絵を描いていません。あとの半生は、優れた才能を集めてイメージを伝え、しかもその人たちの能力を、過酷なまでに、実に見事に引き出したわけで……そういうアンサンブルを作り出すことに徹していました。彼が「絵を描かない」と決めた判断力はすごかった、とぼくは思います。なぜならそのことによって、ディズニー自身が「自分で描いていることの狭さ」から脱出できたのですから。
これは例えば,周りにとても敵わない天才が出現したときに,とるべき行動は何か,ということを考えさせられる言葉です.自分よりも天才と組むことで自分の可能性も広げる,という考え方を持つことは,頭で分かっていても実践するとなるとなかなか難しいことです.ありきたりですが,広い心と大きな夢を持つことが重要なのかも知れません.
画を描くのは天才に任せるとして,それではどういった別の才能が必要になるのでしょうか.
そういう状況のなかでできるだけよいものをつくろうと思えば、ひとつには、もちろんこちらのやろうとすることに共感してくれる才能ゆたかな描き手の存在が欠かせませんが、緻密な設計とはやい段階での的確な判断が必要です。(中略)
だから、これは最終的にどういう動きに見えるのか、これでよいか、自分の考えていたものと少しちがうが、これはこれでそのねらいの範囲におさまっているか、最小限直すとしたら具体的にどこをどうするのか、これで正しいタイミングなのか、などなど、完全な貧乏性で職人的に対処します。
(中略)
だから、これは他の分野にも言えることだと思うけど、「どれだけ好奇心を持って、自分で勝手に課題を立てて疑問を持てるかどうか」ですよね。
この「職人的な対処に必要な判断力」は「自分で勝手に課題を立てて疑問を持つ力」によって培われたものとのことですが,これはとても重要なことだと思います.
さらに,その力は意外なところで培われたもののようです.
「演出助手」として入社試験に合格したはずなのに、入ってみたら同じような新人が十人以上もいたんです。(中略)
仕事は、もう完全な雑用だけでした。セルの整理とか、動画用紙に穴を開けることだとか……。
(中略)
だけど、これはすごく恵まれていたんじゃないかと思います。なにしろ社員採用で、雑用以外仕事がないわけだから、ヒマもあった。
(中略)
だから、勉強する気さえあれば、いくらでも勉強することができるんです。地位を与えられたほうが、ずっと、勉強をする機会は減りますよね。
どんな状況でも腐ってないで,自分のためにベストを尽くせる人こそが才能を開花させることができる,というのは,特に若手にとってはとても勇気づけられることです.
このモチベーションはどこからやってくるのでしょうか.
そして、身近な他人との比較でも前進できると同時に、自分が演出になったあとには、自分との比較ができるようになるわけです。そうなると、むしろ他人と比べるよりは、自分で「これをやってよかった……」と感じられるかどうかが、確かに前進しているという基準になっていったような気がします。(中略)
他人と比較をすれば、どの時点でも、上はキリがないですよね。ところが、自分が一歩前進できたかどうか……結局は、なにかをやるときには、これが大事なんです。
どのようなものにでもこのようなストイックな喜びを見出せること,あるいはそういう喜びを感じるものを見つけることが,才能なのかもしれません.改めて,自分にとっての喜びとは何か?ということを考えたいと思います.
さて,3回に渡って見てきた「ジブリの仕事の仕事」はこれが最終回です.はてなブックマークの方に,各回のコメントをつけておきましたので,興味のある方はそちらもどうぞ.
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